
vol.447(発行日: 2022年3月5日)
校友スポットライトでは、最前線で活躍する校友を紹介。
お仕事のことをはじめ、私生活や学生時代のエピソードなどをお聞きします。
大阪工業大学 機械工学科 2009年卒業
Peach Aviation 株式会社
運航本部 乗員部 乗員第三課
A320副操縦士
小嶋 健吾
さん
自転車、バイク、車、船、そして飛行機―。とにかく乗り物好き、運転好きが高じてパイロットという夢を実現した小嶋さん。漠然としていた夢を現実のカタチにするまで、小さな努力を積み重ねてきた軌跡を振り返っていただきました。人並みならぬ努力を淡々と穏やかに語る小嶋さんの姿に、憧れのような魅力を感じました。

夢が明確になった大学生時代
子どもの頃から乗り物が好きで、4歳で早くも補助輪なしで自転車に乗っていたという小嶋さん。大学2年生の時、大宮キャンパスの図書館で何気なく読んだ航空機の本に大きな衝撃を受け、大空への憧れが急に強くなり、その日の授業後に伊丹空港へ出かけたそう。そこで、たくさんの飛行機を見ているうちになぜか強烈な使命感が湧いてきて、気付けば帰り道で「パイロットになる本」を買っていた。そこでハタと気づいたのが、英語が必須の職業だということ。これまで全く意識していなかったので英語の勉強に力を入れて来ず、大学の頃の成績は決して芳しくなかったという。TOEICでスコアを取りたいと思っても、ペーパーで勉強するだけでは実地経験がなさすぎると思い至り、大学3年の夏休みに1ヶ月間オーストラリアへ短期留学。できることは全てやってみたが、就職活動をする中で操縦士になるにはレベルが違いすぎると断念。それでもとにかく飛行機に関連する仕事がしたいとの思いで、空港で飛行機の誘導や貨物の積み込みなどを行う会社に就職。しかし職場で飛行機を身近に見ていると、『やっぱり操縦がしたい』という想いが強くなっていった。

動かすことが楽しい
それが全ての原動力
数年後、民間のフライトスクールに入校し、2年間の訓練課程を経てライセンスを取得。フライトスクールでは、セスナ機による地上走行や離着陸訓練などに日々取り組み、技量アップに力を注いだ。しかし、ライセンスを取得しても、操縦士を募集している航空会社は限られるため、就職には1年を要した。それでも短くてラッキーな方だという。ライセンスを取得したといっても、実は飛行機の機種ごとに操縦免許があり、エンジンの数などによって異なるライセンスが必要で、Peach Aviation 株式会社に入社後、次々と研修と試験が待ち受けていた。それらをパスし、お客様を乗せての初フライトは31歳の時。感動する暇もなく、機長と二人だけの操縦席では、緊張と手順の確認に必死で、ふと我に返ったのはその日のフライトを終えて飛行機を降りた後だったという。
しっかり訓練すれば誰でも飛行機の操縦ができる!?
たくさんの人々の命を預かる操縦士には年に2回厳しい審査があり、必ず合格しなくてはならない。知識は口述、実技はシュミレーターで行われ、気象条件や滑走路の状態が悪い場合、整備の不具合や事故が発生した場合などが想定され、かなり難易度の高い内容になっている。新型コロナの影響で、乗務機会はやはり減っているが、その時間は迷わず勉強する時間に充てている。機械工学科で学んだ知識も大いに役立ち、学生時代のようにノートを使って勉強に取り組む。『いつかは機長に』という大いなる夢はあるものの、今後の目標について尋ねると、「次のフライトも安全に終わらせること」と控えめに答える小嶋さん。その姿からは、強い責任感とともに、たくましさを感じた。「飛行機の操縦は、車の運転と同じでしっかり訓練すれば誰でもできるようになります。でも雨や雪、風などの天候による影響と、滑走路の勾配や路面の状況などの組み合わせは同じになることがありません。ちょっとした油断で大きな事故に繋がってしまいます。地道に粛々と経験を積み重ねて、事故を起こさない状況判断をすることが仕事ですから、いつも気を引き締めています」と真面目に語りつつ、目前に迫る次の審査に向けて「気合を入れて頑張らないと!」と明るい笑顔を見せてくれた。