vol.452(発行日: 2024年8月5日)

キラキラ輝く校友にインタビュー!!
今回ご登場いただくのは、常翔学園高等学校の卒業生で、
舞台俳優やモデルとして活躍する松居亜美さん(本名・近藤志維菜さん)です。
役者になるきっかけや活動について、また高校時代の思い出などを伺いました。

舞台の上で表現することが生きがい
役者として、もっと高みを目指したい

常翔学園高等学校 普通科 文理進学コース
2013年3月卒業

松居 亜美

さん

(まつい あみ/本名 近藤 志維菜)

常翔学園高等学校 普通科 文理進学コース 2013年3月卒業 松居 亜美さん

現在の仕事について教えてください。

大阪芸術大学短期大学部を卒業後、舞台俳優やモデルとして活動を始めました。2021年から東京へ拠点を移し、現在は神田明神文化交流館内の劇場で、神田明神のご祭神である平将門公を題材にした訪日外国人旅行者向けのショーに出演しています。私の役柄は、将門公の正妻である「君の御前」と妾の「桔梗姫」の2役。劇中に台詞はなく、ダンスや殺陣、日本舞踊などのパフォーマンスが中心の舞台は、多くの方々からご好評をいただいています。

私は幼少期から表現することが好きで、両親にバレエやダンス、歌を習わせてもらっていました。でも高校生の頃はプロへの思いがそれほど強くはなく、大学の進路選択でずいぶんと迷いもしました。両親に相談すると、「好きなバレエを続けたいなら、大阪芸術大学短期大学部はどう?」とすすめられ、同短大舞台芸術コース身体表現専攻に進学することにしました。

なぜ役者の道に進もうと思ったのですか。

短大で役者に必要な専門知識や技術を学ぶうちに、演じることへの興味が高まり、在学中にさまざまなオーディションに挑戦するようになりました。初めて合格したのがミュージカルで、当初はダンサーだったのですが、ディレクターの目に留まり運良く役をもらうことができました。観客の前で台詞を発した時の喜びや、舞台に立った時の緊張感は、今でも鮮明に覚えています。

プロとしてやっていくと決心したのは、短大を卒業した後です。でも、毎回すんなりオーディションに受かるわけもなく、落ちることの方が多くて…。4、5年は本業だけで生活することができず、アルバイトをしながらオーディションやレッスンを受ける日々が続きました。両親は静かに見守ってくれましたが、内心では娘の将来を案じていたと思います。本業での収入が徐々に安定してきたのを機に、よりチャンスを求めて上京しました。大きなテーマパークで行われるショーのヒロインに1年間抜擢された時は、両親が観にきてくれて、観客から声援を浴びている私の姿を誇らしく感じたようです。ようやく少しは親孝行ができたのかなと、ほっとしました。

高校時代はどのような日々を過ごしましたか。

入学して間もなく校舎が新しくなり、エレベーターを使って教室に行くようになりました。それがとても新鮮で、高校生なのにオフィスビルに通っているみたいな不思議な感覚になりました。

高校時代を振り返って、真っ先に思い出すのは部活動のことです。中学の頃はバレエのレッスンに忙しくて部活動ができなかったので、高校では憧れだった運動部に入りたいと思い、バレーボール部に入部しました。ところが、私のような初心者は少なく、周りは経験者ばかり。練習についていくことに必死で、バレエのレッスンと掛け持ちしながら、ほぼ毎日ある部活を休まず続けるのはかなり大変でした。レギュラー争いで精神的にも追い込まれ、チャンスボールを打ち返すことすらつらくなり、コートで涙があふれたこともあります。でも、部活帰りに部員のみんなで梅田へスイーツを食べに行ったりした楽しい思い出も多く、今となっては部活動で得たさまざまな経験が役者としての糧になっています。

舞台衣装の十二単を着た松居さん
艶やかな衣装も舞台を盛り上げる大事な要素です。「役柄で十二単を着ます。本物ではないのでそれほど重さはなく、着脱も便利なつくりになっているんですよ」と松居さん。十二単での華麗なダンスに感動した観客からは声援が上がり、その熱気が次の舞台へのエネルギーになるのだそうです。

学業についてはどうでしたか。また印象に残っている先生はいますか。

勉強はあまり好きではなかったのですが、自分なりに努力はしていたと思います。一番苦手だった数学は、どうにか克服しようと放課後に先生に質問をしたり、テスト前にはよく友達と食堂で勉強したりしていました。当時の友達とは今もSNSでつながっていて、近況をうかがい知ることがあります。結婚したり、ママになったり、それぞれの場所でがんばっているんだなと刺激をもらっています。

印象に残っている先生は1人いますよ。短大への進学が決まった後、その先生に、将来は舞台で活躍したいと思っていることを伝えました。すると「今のままでは無理。もし本気で夢を叶えたいなら、短大に行くまでの時間も無駄にしないで、できることをやらないと。例えば芸術系の本を読むとか。図書室にもたくさんあるのに読んでないでしょ」と厳しい言葉が返ってきました。実はこの先生とは以前から意見が合わず、口論になったこともあったんです。でもこの時は、悔しい反面、納得もして、その後に図書室でいろいろと本を借りて勉強しました。夢と向き合うきっかけをくれ、行動に移せたのは先生のおかげ。今は素直に感謝しています。

これからチャレンジしたいことはありますか。

私は人から「変わっているね」とか「感受性が豊かだね」と言われることが多いんです。自分でも幼い頃から人と感じていることや考えていることが違うのを認識していて、生きづらさを感じていました。昔は精神的にも弱く、自分の胸の内をうまく発散できずに苦しくなってしまうこともありました。年齢を重ねて苦労や挫折を味わい、少しは心も鍛えられましたが、根底にある弱さは変わっていません。けれども、表現する仕事は弱い部分も持ち合わせておく必要があります。自分の中のプラスな面もマイナスな面も、陰も陽も、すべて演じる上で必要だとわかってからは、弱さを個性として受け入れられるようになりました。

舞台は私が自分らしくいられて、生きていることを実感できる場所。普通だったらこんな不安定な仕事はさっさと辞めて、安定した職に就いたり、結婚したりするのかもしれませんが、私はまだそのどちらも選ぶつもりはありません。これからもきっと辞めるという選択肢はなく、一生役者をやり続ける覚悟です。絶えずオーディションを受けていて、常に誰かと戦っているので、気を緩める時間はあまりありません。唯一の癒やしは舞台に立つこと。舞台上ではアドレナリンが出て気持ちが高ぶるのですが、この感覚にはどうやら中毒性があるようで、一度味わってしまってからは辞められなくなりました。これからも、表現する仕事であれば、何にでも挑戦していきます。