
vol.450(発行日: 2023年8月4日)
キラキラ輝く校友にインタビュー!!
今回ご登場いただくのは、大阪工業大学高等学校(現常翔学園高等学校)の卒業生で、
現在はドイツで暮らす藤阪淑乃さんです。
一時帰国時に高校時代の思い出やドイツでの生活などについてうかがいました。
趣味はサイクリングに日本酒に語学。
いつかドイツ語で大人の会話を!
大阪工業大学高等学校 普通科
2001年3月卒業
藤阪 淑乃
さん
(ふじさか よしの)

今日は取材場所の常翔学園高等学校まで自転車で来られたとか。
日本で会社員をしていた頃からサイクリングが趣味なんです。今日は実家のある池田市から常翔学園高校まで1時間ほどで来ました。ドイツでも気候の良い夏場は仲間たちといろいろな場所に出かけています。遠くの街までビールを飲みに行ったり、国境を越えてオランダまで100㎞ほど走ったり。ドイツでは自転車を分解せずそのまま列車に積み込めるので、帰りは鉄道を利用することもあります。
そんなドイツ暮らしも今年で8年目になりました。今住んでいるデュッセルドルフはリトルトーキョーと言われるくらい多数の日系企業が進出し、日本人も多い街。アジア系のスーパーもあって日本食が手に入りやすく、住みやすいところです。また、風光明媚なライン川沿いは市民の憩いの場で、休日は散歩する人やカフェでビールを楽しむ人たちで賑わっています。

昨年まで日本酒ソムリエとして働かれていたそうですね。
お酒を飲むことも趣味で、とりわけ日本酒が好きです。大学を卒業してから9年間働いた会社を退職した時に、「次は日本酒にまつわる仕事がしたい」と思い、日本酒ソムリエの資格を取得しました。また、大学時代に英語と中国語を専攻していたことから、中国語による日本酒の提供・販売のスペシャリストである『国際唎酒師』の資格も取り、台湾で働こうと考えていたのです。現地まで行って職探しをしたものの働きたいところが見つからず、知人の紹介で日本酒や抹茶を世界各国へ輸出している京都貿易株式会社に入社しました。
その後、ドイツでの新事業を任されることになり、32歳の時に渡独。日本各地の酒蔵から私が厳選した日本酒をドイツで販売したり試飲会を開催したりと、日本酒ソムリエとしてさまざまな業務を担当しました。ドイツの人に「こんなにおいしい日本酒は初めて飲んだ」と喜んでもらえることが嬉しく、やりがいのある仕事だったのですが、昨年、イタリアからドイツに来ていた男性と結婚したことを機に退職。現在はデュッセルドルフで主人が経営しているイタリアンレストランを手伝っています。店には日本酒を置いていないものの、日本酒ソムリエの知識を生かしてお客様のご要望に応じたワインを提案しています。

大阪工業大学高等学校に進学した理由を教えてください。
中学生の時から「長く働ける職業に就きたい」と考えていて、そのためには手に職があった方がいいだろうと思い、薬剤師を目指すようになりました。さまざまな偉人の伝記や父親が愛読するビジネス雑誌を読んで国際人への憧れも募らせていたので、「薬剤師になれば海外ボランティアにも行けるかな」という期待感もあったのです。
その夢を実現するために私が描いたのは、中学卒業後に大阪工業大学高校へ進み、同一法人である摂南大学の薬学部に進学するというビジョンでした。進路を見直す転機が訪れたのは高校1年の時。家族で旅したシンガポールとニュージーランドで、一生懸命勉強したはずの英語が全く通じないことにショックを受けました。この経験が英語力の向上心に火をつけ、進学先を関西外国語大学に変更しました。当時の大阪工業大学高校は英語のカリキュラム編成が習熟度別だったので、授業がわかりやすく、楽しみながら学ぶことができました。学習プリントは今でも大事に持っていて、たまに読み返したりすることもあるぐらいです。
どのような高校時代を過ごしましたか。
先生方が優しく、私たちと年齢が近かったこともありとても親近感を持っていました。特に用事もないのに職員室に行って、たわいもない話で盛り上がったり、悩み事を相談したりすることも多かったです。お世話になった先生の中でもとりわけ印象に残っているのは、化学の北尾元一先生(現学園理事)です。とてもユニークな先生で授業もおもしろく、実験を丁寧に教えてくださったおかげで化学が好きになりました。
また、担任の樫木智子先生の言葉も鮮明に覚えています。ある時、「あなたたちはもう大人なんだから、何でも自分で選択しないとダメ。勉強をするもしないも勝手だけれど、勉強は自分のためにするものですよ」と諭され、積極的に学業と向き合うようになりました。樫木先生とはSNSを通して今も交流があり、ありがたいことに結婚祝いも贈ってくださいました。クラスメイトも気の合う仲間に恵まれました。同じクラスに10人いた女子は仲が良く、みんな個性的でした。時折思い出すのは、高校3年の文化祭での出来事です。クラスで一番大人しい女の子がGLAYの歌を熱唱し、その圧倒的な歌唱力に感動したことが今も私たちの語り草になっています。
これからの目標や夢は何ですか。
ドイツ語をもっと流暢に話せるようになることです。中国語は大学時代に1年半北京と上海へ留学し、猛特訓したことでネイティブレベルの発音と語彙力を身につけることができました。ドイツ語で大人の会話をするためにはある程度の語彙力が必要ですし、現地特有の文化やマナーに応じた表現力もまだまだ磨かなければいけません。いずれは中国語と同様に、頭で一度日本語に変換しなくてもすぐに言葉が出るレベルまで上達することが目標です。
主人とはイタリア語とドイツ語を駆使してコミュニケーションを取っています。実は昔イタリアを旅した時にイタリア語にも興味が湧いて、少し勉強したことがあるんです。自転車や日本酒と等しく、語学も趣味と言えるかもしれませんね。多様な言語を学んできましたが、やはり日本語が一番魅力的だと思います。豊かな擬態語や同語反複などのほか相手を思いやる言葉遣いに日本語の美しさを感じます。最近の学生は外国への関心が低く、日本での暮らしや国内旅行で満足する方が多いと聞きます。ですが、自分のためだけに惜しみなく時間を使えるのは学生の特権。わずかな旅費でも海外旅行は十分に楽しめます。ぜひフットワークよく日本を飛び出して見聞を広げてくれることを願っています。
