校友スポットライト

vol.450(発行日: 2023年8月4日)

校友スポットライトでは、最前線で活躍する校友を紹介。
お仕事のことをはじめ、私生活や学生時代のエピソードなどをお聞きします。

大阪工業大学 工学部 応用化学科 1999年卒

日本貨物鉄道株式会社
関西支社 岡山ターミナル駅

駅長

山本 昌彦

さん

毎日の暮らしの中で目にする、全国各地で育てられたじゃがいもやタマネギといった野菜や果物などの農産物や食料品、工場で生産された多彩な加工品や日用品…。それらがどのように近くのスーパーや店舗まで届けられるのかをご存知でしょうか?日本貨物鉄道(JR貨物)の岡山ターミナル駅で駅長をされている山本さんにお話をうかがいました。

選んだ道がベストだと信じたい

子どもの頃から鉄道と物流と化学が好きだったという山本さん。高校卒業後は早く社会人になりたい気持ちともっと学びたい気持ちの間で揺れ動き、JR貨物への入社と同時に大阪工大・応用化学科の第Ⅱ部に入学。日中は、うめきたエリアにあった梅田貨車区で勤務し、主に車両のメンテナンスを担当。17時になるとバイクを飛ばして大学へ向かい、講義を受ける…そんなハードな日々を過ごしたという。「時間的にも肉体的にも限界に挑戦、といった感じでした。車両や物流と化学って全然異なるもののように思えますが、私は物流の世界に飛び込みながら化学を学んだことで、例えば薬品類が運ばれる車両も薬品名を見るだけで慎重に扱うべきものや、もしもの時の対処方法がすぐにわかります。社会人と学生という二足のワラジを懸命に頑張ったこと、大学で学んだ化学の知識そのものも、全て自分の選択です。反省や後悔もいっぱいありますが、この道がベストだったと今ではハッキリ言えます」と屈託なく笑う。

前職場の岡山機関区に勤務する後輩の上原遼大さん(大阪工大大学院機械工学専攻2021年3月修了)と

現場主義だからこそ、車両に対する愛があふれる

梅田貨車区には2001年まで勤め、車両のメンテナンスだけでなく、検査計画や品質管理、車両メーカーからの新車輸送、特殊な貨物の輸送など、車両や輸送技術を幅広く習得。吹田機関区助役や本社車両部・支社車両課長の勤務を経て、岡山機関区に配属。大学は卒業しているが入社時が高卒となるため、いわゆるノンキャリでありながら45歳の若さで機関区長に就任。

そして現在は駅長として岡山ターミナル駅に勤め、社員の管理や運送会社との調整などのマネジメント業務を担う。「根っから機械いじりが好きなので、ちょっと調子が悪いと聞くとすぐに工具を持って駆けつけてしまいます(笑)」。そう言いながらも現場のトップとして、JR貨物のイメージアップにアイデアを発揮。社員が楽器を演奏し歌う社歌の動画を構成してYouTubeにアップしたり、京都鉄道博物館での引退車輌の見送りセレモニーのイベントを企画。車両に対する感謝の寄せ書きや紙テープ・紙吹雪でお見送りし、鉄道ファンならずとも感動の別れを演出した。

線路が繋がってさえいればなんでも運べる!

お休みの日にスーパーに行くと、陳列されている商品がどこからどうやって来たのか気になってしまう山本さん。鉄道輸送しかなかった高度経済成長期時代に比べ、今は長距離トラックが主流になっているが、実は物流において鉄道輸送はかなり環境に優しい輸送手段なのだそう。長距離トラック65台分の荷物も貨物列車なら26両編成1本で輸送できる。ドライバー不足にも対応でき、安全性も高い。こうした鉄道輸送を経て運ばれた商品や認定を受けた企業には『エコレールマーク』が表示されており、注意して見ると手に取る馴染みの商品でもこのマークを見つけることができる。「JRはやはり安全かつ正確に『人』を運ぶ一般車両が主役で最優先ですが、その裏で貨物輸送も人の暮らしにとって欠かせないものです。私は人のため、車両のため、そして世の中のために力になれるよう努めることで、少しでも社会に貢献していきたいと思います」。山本さんが若い運転士と関西弁で交わす笑顔が、とても印象的だった。