
vol.445(発行日: 2021年3月8日)
校友スポットライトでは、最前線で活躍する校友を紹介。
お仕事のことをはじめ、私生活や学生時代のエピソードなどをお聞きします。
大阪工業大学 機械工学科 1967年卒業
下呂ロイヤルホテル 雅亭
離れの宿 月のあかり
取締役会長
山岸 政雄
さん

見知らぬ土地、岐阜県・下呂温泉で、未知の業界であった旅館業をお父様とともに開業され、今や下呂温泉の中心的旅館として名を馳せる『下呂ロイヤルホテル 雅亭』。常に次代を見据えた新しい視点で次々と仕掛けを展開されてきた山岸政雄さんに、スポットライトを当てる。

未知の世界に臆することなく挑み、果敢にチャレンジし続けて
神戸に生まれ育ち、当時金属加工の職人をしていたお父様からの勧めもあって、大阪工業大学への進学を決められた山岸さん。機械工学科の受験を勧めたのもお父様で、当時は一緒に鉄工所を始めるつもりではないかと思われたそう。卒業後は大阪の大手印刷会社に就職。ところがお父様が下呂温泉で旅館・河鹿荘を始めることになり、就職から1年もしないうちに退職して未知の業界である旅館業に携わることに。「お客様の集め方はもちろん、経理、接待、料理など何もわからない状態でした。旅館業はとにかく申請手続きが多くて複雑。調理師のほか、防火管理、ボイラーや危険物の取扱い免許、大型バスの免許など旅館業を営むのに必要な資格を次々と取得しました」。必要に迫られて、と笑顔で話すそのバイタリティーに脱帽させられる。
感謝の気持ちから、同窓生が集う「竜の子会」の事務局も担当
大学生活では増尾研究室に所属。前田親良先生にも指導いただき、楽しく研究ができたと振り返る。「とにかく旅が好きで、一人でも仲間とでも、全国津々浦々、時間があれば出かけていました。まさか自分が旅人を迎える側になるとは、当時は思いもしなかった」。機械工学科で学んだ設計図や電気の知識が、旅館建築の図面チェックや配管工事の修理などの際に随分役に立った。本館の増改築や離れの『月のあかり』を建築する際には、設計事務所が提案してきたデザインや設計を丸ごとひっくり返したこともあると笑う。
現在も増尾研究室の卒業生で構成する「竜の子会」の事務局を担当。2006年には、卒業生50周年祭を『雅亭』で開催し、大変好評を得ることができた。以来、数々のお祝いの席や記念行事を毎年のように開催。2020年も5月に開催する予定だったが、コロナ禍の状況に鑑みて中止に。年に一度、小旅行気分で下呂まで足を運んでいただき、笑顔が集う機会を提供することができず残念だったと話す。
次代を見据え、気持ちを推察し斬新なアイデアを生み出す
1978年に代表取締役に就任してからはさらに精力的に取り組み、1988年に『下呂ロイヤルホテル 雅亭』を新築。2006年には雅亭に隣接した建物を購入し、『しらさぎ横丁』と『さるぼぼ七福神社』を、また当時は珍しかった足湯も同時に2ヶ所開設。単に土産物を並べるだけでは続かない、との考えから、飛騨のさるぼぼをキャラクター化したり、土産物コーナーを広くするなどして、人が集まる工夫を凝らした。2007年には離れの宿『月のあかり』を開業し、さらに2018年には地元の名産である飛騨牛が堪能できる焼肉店もオープンした。離れの宿『月のあかり』は、「離れ」ブームの先駆けともいえる存在。ホテルの部屋では実現できない合掌造りを模した吹き抜けの空間、一本木の柱、部屋ごとにある露天風呂、和空間に置く天蓋付きのベッド。どれも当時は奇抜ともいえる発想だ。「新型コロナの影響は受けましたが、特に『月のあかり』は秋以降、ご予約も増えています。今後は宴会用の広間も4~5人でご利用できる個室にし、部屋食とテーブル食を選んでいただくなど、常にお客様の気持ちを推察し、時代に合わせたスタイルに柔軟に変化していくことが大切です」予想外の状況も易々と飛び越えていく。
山岸さんからそんなしなやかな強さが垣間見えた。

