校友スポットライト

vol.443(発行日: 2020年3月7日)

校友スポットライトでは、最前線で活躍する校友を紹介。
お仕事のことをはじめ、私生活や学生時代のエピソードなどをお聞きしました。

大阪工業大学 電子工学科・1998年卒業

キツキハーネス有限会社 代表取締役
紙芝居師

石山 剛一

さん

ケーブル加工製造会社の社長でありながら紙芝居師という、異例の肩書きを持つ石山剛一さん。大阪での学生時代を経て就職。その後、大分県杵築市にある実家の家業を継ぎ、現在の多彩な活動ぶりに至るまでを伺った。

小さな頃から身近にあった電気事業で家業を継ぐ

自動車やロボット用の組み電線=ワイヤーハーネスの製造会社「キツキハーネス」の代表取締役として自ら営業活動に余念がない石山さん。1976年に設立した父のあと母が女性社長として継ぎ、2011年から3代目として活動している。「もともと会社の前身が町の電気屋さんで、幼い頃から電気が身近にあった環境でしたね。親戚や母も大阪出身。九州から遠くに出たいのもあり大阪工業大学を受験。学生時代から音響にも興味があり、電子工学を選びました」。中学・高校は放送部でアナウンスも始め、大学では学祭の実行委員会で企画・MC・音響を担当。同時に元60周年記念館のバイトもこなし、400人ほど入るホールの照明や音響・PAなどの操作を任せられていたというプロ顔負けの腕前のようだ。「在学中にゴルバチョフ大統領が来学し特別講演がありました。あまりにピリピリした現場で大変でしたが、そのときの経験から大概のことは対応できるかなと思いました。他にも、フジテレビの公開収録、大手広告代理店が仕切る事業にもかかわって色々と勉強しましたね」。学外の主催者が用意するプロのスタッフに対応するために必死で勉強した結果、教員より事務職員のほうが仲が良かったというのは石山さんならではのエピソードだ。

社内託児所を設置し女性に働きやすい環境を

卒業後は、北九州の通信機の会社に就職。ダイヘン(大阪変圧器)の子会社・ダイヘンテックを経て、2001年にキツキハーネスに戻り、2011年から社長として今に至る。ロボットや車など特定の仕様にあわせて作るワイヤーハーネスは基本的に手作業、受注生産。特殊仕様のものなので少量多品種生産になる。会社の立ち上げ当初から従業員の8〜9割が女性という。「父が1982年から託児所を併設したのですが、事業所内の託児所は珍しかったようで1991年に杵築市から表彰されました。現在も臨時託児所として機能しています」。そんな会社のDNAを継いだ石山さんは、従業員ができるだけ安心して働ける会社にしたいと、機械でやれることと手作業に分けて生産性を上げ、従業員には習熟度を高めて長く働いてもらうようにしている。

大人も子どもも楽しめる紙芝居で町おこしに一役

35歳の頃から青年会議所に入って地域活動を始めた。もともと大学でイベントをやっていただけに企画、音響は得意分野だ。「毎年5月に開催される『お城まつり』の生中継配信を2010年から開始しました。Ustreamで1万ビューまでいき、自ら紙芝居も担当した。そのことで誰かに興味を持ってもらい、杵築を知ってもらえたらと」。さらに2016年からは毎月第3土曜日に「城下町マルシェ」を開催し客寄せで紙芝居を始めた。西宮市のまちづくり協議会からオファーがきて佐渡裕さんのステージで紙芝居を披露したり、2018年には大分で開催された国民文化祭でもステージで紙芝居をした。「桃太郎、かぐや姫など、エンタメ性の高い日本昔ばなしを選んでいますが、高齢者向けには金色夜叉、曽根崎心中、瞼の母など、お客さんの顔を見ながら喜んでもらえる物語を選ぶようにしています」。自分の得意なことを生かして地域を元気にさせたい。石山さんの思いは会社と故郷に確実に根付いている。