
vol.451(発行日: 2024年2月25日)
キラキラ輝く校友にインタビュー!!
今回は大阪工業大学工学部ロボット工学科を卒業後、
ヤンマーアグリ株式会社に勤務する中村倫子さんにご登場いただきます。
滋賀県にある職場を訪ね、現在の仕事や学生時代の思い出、今後の夢などについて伺いました。
夫のサポートと娘の笑顔に支えられ
目指すは全農業機械の自動操舵化!
大阪工業大学 工学部 ロボット工学科
2016年3月卒業
中村 倫子
さん
(なかむら みちこ)

現在の仕事について教えてください。
農業関連機械の開発や製造、販売等を行うヤンマーアグリ株式会社の中央研究所で、野菜移植機や収穫機関連の電装設計を担当しています。入社後3ケ月の研修期間を経て最初に配属されたのが滋賀県にある中央研究所で、1年間はトラクターなどの性能試験に携わりました。その後、岡山県にあるヤンマーアグリ本社へ転勤となり、大型トラクターやロボットトラクターと呼ばれる自動運転農機、OEMトラクターの設計を行っていました。トラクターの設計は社内の花形部門。夢だった業務に就けて嬉しかったのですが、トラクターはすでに完成された農業機械で田植機やコンバインもほぼ全自動化され、今以上の進化が難しいことを知りました。
一方、野菜の苗植えや収穫に使う農業機械はまだ発展途上にあり、自動化もこれから。その発展に貢献したいと思うようになり、社内結婚した夫の転勤について行く形で自身も中央研究所へ戻ったことを機に、「野菜づくり関連機械の電装設計にチャレンジしたい」と上司に志願しました。電装設計を担当する女性社員は今のところ私1人。挑戦心や自由を重んじる社風に支えられ、やりがいを感じながら働いています。図面を描いていると集中しすぎることも多く、気づいたら勤務時間中に一度もトイレに行っていなかったなんて日も(笑)。自分が設計した農業機械の試作が出来上がった時の喜びは大きく、仕事への原動力になっています。

今の会社に就職したきっかけは何ですか。
幼いころに母がいろいろな体験イベントに連れて行ってくれました。その中で、ロボットづくりや田植えなどを経験し、ものづくりを好きになったことが今につながる原点です。中学の進路選択時には農業高校と工業高校のどちらに進むべきか迷ったのですが、当時は航空整備士に憧れていたこともあり、夢への足がかりになればと大阪府立都島工業高等学校の電気機械科に進学しました。
大阪工業大学工学部ロボット工学科を選んだのは、高校での学びをさらに深めたいという気持ちが強かったからです。機械工学や電気電子工学といった学問は女性がなかなか選びにくい分野なのかもしれませんが、私はおもしろさを見出すことができ、高校、大学で築いてきた専門キャリアを社会人になっても積み上げていきたいという意欲が芽生えました。自分の将来像を具体的に描いていく過程で航空整備士への憧れは薄れ、就活中にヤンマーホールディングスの求人情報を見つけ、興味のあった農業と機械開発の両方に携われると思い就職を決めました。

どのような大学時代を過ごしましたか。
正直なところ、学業には熱心な方ではありませんでした。機械工学はまじめに取り組んでいましたが電気電子工学はあまり…。でも電気系の実習は楽しくて、大学時代に得た知識が電装設計の仕事にも生かされています。教科書は今でも大事に持っているので、引っ張り出して読み直すこともよくあります。特に信頼性工学は工場で部品を製造する際の廃棄率を算出する時に必要な知識なので、教科書を頼りに当時学んだことを振り返っています。電気電子工学については社会人になってからその重要性を痛感し、もっと真剣に勉強しておけばよかったと後悔しました。
大学時代の思い出で一番心に残っているのは部活動です。軽音楽部に入部し、エレキベースを担当していました。楽器は未経験だったので、みんなに追いつこうと一生懸命練習に励み、ライブでステージに立つことが楽しみでした。2回生になると役職に就き、学園祭時などに先輩と部長から寄せられる意見を聞いて、さまざまな事項を調整するという難しい役を任されました。結構苦労したのですが、この時に培ったコミュニケーション力が仕事で役立つ場面も多く、頑張った甲斐があったと感じています。
ご主人は同期だとか。仕事と家庭の両立はどうしていますか。
同期入社の夫は機械設計を担当していて、家でも仕事の話は結構しており、仕事が行き詰まった時には、困っている内容を相談し合っています。お互いに良いアドバイスができない時もありますが、私と夫は違う機械を担当しているので、全く内容を知らない人に説明することで、頭のなかで課題と目的を改めて明確化でき、打開策が出せたりします。夫は大学時代、農学部だったので、農業についてあまり知識のない私に農業体系や、実際に農家の方が多く使用されている作業機について教えてくれます。野菜の栽培方法は地域によって結構異なるので、試験でお邪魔した農家の方の意見が全国共通かと思えば、違うこともあります。夫に聞いて教えてもらって、地域で分けて考えることができています。
でも、育児や家事に関しては、頼りっぱなし。3歳になる娘の幼稚園のお迎えはもちろん、洗濯や食事の準備なども率先してやってくれます。職場の環境や私の立場、仕事の状況をよく理解した上で協力してくれているのだと思います。出張や繁忙期も乗り越えられるのは夫の助けがあってこそ。本当に頭が上がりません。ママとしての私は完全に娘に主導権を握られ、振り回されてばかりです。私が母にしてもらったように、最近は娘と連れ立ってイベントに参加することも。体験から感性を広げ、伸びやかに成長してほしいというのが夫婦そろっての願いです。

今後の夢や目標は何ですか。
仕事を任せてもらえるようになったので、今後もヤンマーアグリで電装設計を続けていきたいと思っています。日本の就農者数は年々減少傾向にあり、作業の省力化や効率化へのニーズが高まっています。それにはAIやICTサービスなどを活用した農業への移行が急務であり、開発も進んできました。広く普及するには解決すべき課題がまだ残されていますが、将来的にはすべての機械を自動操舵化し、農業を女性1人でもできる仕事にすることが当社の目指すところであり、私の夢でもあります。重労働という従来のイメージを払拭し、スマートでクリエイティブな農業の実現に向け、これからも努力を続けていきます。